Secrets of HAMMOND ORGAN B-3

Link for similar articles for English readers

ハモンドオルガン B-3 の秘密 - その構造と操作

 よく、今世紀初めにハモンドが最初の電気オルガンを発明したとの記述を目にするが、それは事実ではない。アメリカ人の発明家タデアス・ケーヒルによって発明されたテルハーモニュームがそれで、オルタネーターと呼ばれた回転する電気ジェネレーターによって作り出される正弦波のトーンが配線を通じて送信され、スピーカーを通して聞くことが出来た。
 しかし一般によく知れ渡っているのはトーンホイール・ジェネレーターをもつハモンドオルガンの方である。
 1933年のこと、アメリカ人の時計職人であったローレンス・ハモンドは彼の発明したシンクロナスモーターを何か他にも利用出来ないかと模索し始めた。そしてハモンドはケーヒルの発見を基に電気オルガンを作り上げたのであった。
 最初のプロトタイプが公の前に展示されたのは、1935年4月にラジオシティのRCAビルに於いて開催された産業美術博覧会であった。プロダクションモデルの最初のハモンドはモデルAと呼ばれ、最初の顧客は自動車王ヘンリー・フォードで、6台のA型を即座に注文したという。この頃のハモンドオルガンの名板にはHammond Clock Companyと記されていた。(後にHammond Instrument Company - Hammond Organ Compay となっていった。)

 モデルAは年々改良され続け、1954年10月に開発され1955年1月に発売になった最高傑作とも言える有名な B-3 に至った。1974年終わりまでの約20年間 作り続けられてきたハモンド“トーンホイール”オルガンB-3こそ本物のハモンドオルガンであることは異論がないところであろう。

 ハモンドB-3を構成する主なパートには次のものが挙げられる。
 基本的音源であるトーンホイール・ジェネレーター、音色合成をコントロールする9本、4セットのハーモニック・ドローバー、タッチレスポンス・パーカッション、ビブラート/コーラス、パーカッション・アンプとビブラート・アンプを組み込んだ真空管式のプリアンプ、白黒が反転したプリセット・キーと9列接点を持つ2段のキーボード、それに優れた構造のエクスプレッション・ペダルである。

トーンホイール・ジェネレーター の構造

 ハモンドオルガンB-3 は一般の電子オルガンとは異なり、電気オルガン、電磁オルガンと言った方がより正確である。B-3 の音源はトーンホイール・ジェネレーターと呼ばれ、その起源は最初のハモンド、モデルA まで遡る。
 トーンホイール・ジェネレーターは96組のトーンホイール(フォニックホイールとも言われた)とピックアップ・コイルから成り立っている。トーンホイールとは直径約4センチのオレンジ色に塗られた鋼鉄製の円盤で、その周囲には音階に応じて様々な大きさの正確な波形や歯形が連続して刻まれており、これがハモンドによって発明されたシンクロナス・モーターによって一定の速度で回転する。
 そのトーンホイール周囲に接近して、先端が尖った棒状の永久磁石にコイルが巻つけられたピックアップが固定されていて、このピックアップの先端をトーンホイールの波型や歯形の最も高い所が通過する時に、そこに磁場の変化が生じ、コイルの中にわずかな電圧が誘導される。これをプリアンプで増幅してハモンド・サウンドが作られるのである。1秒間にピックアップを通過する出っ張りの数がより多くなると、ピッチがだんだん高くなっていくが、棒磁石とコイルの巻数は、音のピッチを変えるために変化し、大きい棒(ロッド)とコイルは低音部に使用され、高いピッチを得るためにそれはだんだん小さくなっていく。蛇足ながら、Rhodes のエレクトリックピアノはこのピックアップとよく似た方式を取り入れている。

 一番低いオクターブは、2つの歯形をもった12個のホイールで作られる。それに続くオクターブでは、4, 8, 16, 32, 64, 128, 192 の歯型をもつホイールが使われている。最高のオクターブのトーンホイールは256の歯数をもつべきところだが、1934年の切削加工技術ではそれがとても小さすぎて出来なかった。それに代わって、最高部の半オクターブのトーンホイールは、オクターブ分高い仕切の中に収められた。すぐ上の次の半オクターブの仕切の中で、最初の半オクターブの音を発生させると、192の歯数でも同じ周波数を発生させることができたのである。 
 トーンホイールは、ジェネレーター・アセンブリーの中で、2列48室に仕切られた場所の各々に1組ずつセットになって収められている。各仕切りの中の2つのホイールは、メインドライブシャフト上の真鍮製のギアによって駆動される。トーンホイールはベークライト製のギアとペアになっており、ベークライトギアはドライブギアと噛み合わさっている。12の異なった大きさのベークライトとドライブギアが使用されており、その1つがそれぞれ12音(クロマチックで)を受け持っている。そのギア比はそれぞれのホイールの回転速度を決定し、ホイール自身の歯数と共にそれは結果的にピッチを決定することになる。 
 それぞれのトーンホイールによる信号出力は、正弦波に非常に近い形であるが、不必要な倍音は、アナログ・フィルター回路で抑制している。

 B-3 においては全部で96のホイールがあるが、そのうちの91個が実際に音を発生させている。8オクターブの上半分は機能していなく、構造的なバランスのためだけに付いている。96全てが機能するトーンホイールは後のH-100 シリーズや X-77 で用いられることになる。

 トーンホイール・ジェネレーターには60Hz仕様の物と50Hz用があるが、その殆どは60Hz仕様である。そのため東京などの50Hz地域でそのオルガンを使う場合にはサイクルコンバーターを使って、ジェネレーターの回転を上げてやる必要がある。そうしないと音程が短3度低くなってしまう。
 また、ピッチコントロールを行うのにも、周波数の調整ができるサイクルコンバーターが必要になる。
 また、100V仕様のB-3はないので、スライダックのようなトランスで115V以上に昇圧する必要がある。


スタート/ラン・スイッチ

 B-3をスタートさせるにあたってはちょっとした儀式が必要である。
 電源スイッチを捜すとキーボードの右上に2つのスイッチが目に入る。左側のスイッチにはスタート、もう片方にはランと記されている。ジェネレーターには96のトーンホイールを回すためのメインモーターであるシンクロナスモーターがあるが、当時シンクロナスモーターはそれ自身ではスタート出来なかったので、外部の手助けによってある回転域まで回転を上げてやることが必要であった。しかし一旦正しい回転域まで上がると60Hz或いは50Hzで正確に回転し続けるようロックされる。
 そうするために、シャフトの先にギアのついたスタートモーターがジェネレーター反対側に付いている。スタートスイッチを押してオンにすると、ガーッ!という音がし始めるが、それはスタートモーターによってトーンホイールとシンクロナスモーターが回転を上げさせられている音である。

 スタートスイッチを押し続けながら、約8秒後(トーンホイールが正しい回転数にまで上がったとき)にランスイッチを入れる(この時にシンクロナスモーター、真空管プリアンプ、レスリーの電源が入る)。そのまま4秒ほどホールドしてスタートスイッチから指を離す。スタートスイッチにはリターンスプリングが付いているのでオフになり、ここでシンクロナスモーターが自身で回転し続けることが出来るようになる。
 しかしこの時点ではまだ音が出る状態にはなっていない。約30秒程すると、真空管も暖まってきて音が出る状態になり、レスリーのトレモロ切り替えも出来る状態になる。

ハーモニック・ドローバー

 ハモンドオルガンのハーモニック・ドローバー方式については既に多く説明がなされているので、ここではB-3のドローバーに限っての特徴を記すことにする。
 B-3のスムーズドローバーは、B-2の初期型以前の古いタイプのドローバーとは異なり、1,2,3,4,5,6,7,8 とドローバーを引き出していっても、途中で音がとぎれることがないように作られているが、それは以前は9列のバスバーを移動するドローバーのパンタグラフ接点がシングルであったものがダブルに改良されている為である。
 波形に関してマニュアルのドローバーが1本1本正弦波を出すのに対し、16', 8' のベースドローバーは既に基音と3倍音、2と4倍音、6と8倍音、10と12倍音が合成されており正弦波ではない。外見的には後期型には角型に変更になったドローバーノブにはピッチを表わす数字が、16', 5 1/3', 8', 4', 2 2/3', 2', 1 3/5', 1 1/3', 1' のように書かれているが、'67年以前に製造された丸みを帯びたそれには、その表記がない。しかしこちらの方が丈夫である。
 このドローバーを、音を出している時に前後させてリアルタイムに音色を変化させるテクニックもオルガン奏者の間ではよく利用されている。

 尚、16'ドローバーは1番低い12音ではその1オクターブ上の音階が繰り返され、若干ボリュームも小さくなる。また1'ドローバーは最高部より2番目のGより上は繰り返されて出る。このあたりが高音部での音の厚みに貢献しているものと思われる。

 オルガンをあまり弾かずにドローバーを動かさないでおいたり、空気の汚れた所で長く使っていると、ドローバーのパンタグラフ接点やバスバーが汚れたり、酸化被膜ができてガリが出たり、途中で音が途切れることがあるが、このような時はクラモリンR5やケイグ・デオキシットD5のようなスプレーをノズルを用いて吹きかけてやると、簡単に治る。

キーボード、キー接点、プリセット・キー

 B-3の鍵盤は上下5オクターブの61鍵で、シンセサイザーなどのキーボードと違って、ピアノのようなオーバーハングのないスクエアな鍵盤が特徴でグリッサンド奏法に適した形と言えよう。ナチュラルキーは真っ白ではなく、アイボリー色になっており、硬度が高く爪などのキズが付きにくく配慮がなされている。また鍵盤の後方先端の板バネはネジでで固定されており、これがリターンスプリングになっている。鍵盤の下にはキーコンビネーションと呼ばれ鍵盤の正しい位置決めをするため物が取り付けられている。このキーコンビネーション先端にはフェルトが付いていて、これが消耗すると鍵盤同志が干渉してカチカチと音をさせるようになるので、その場合はキーコンビネーションの交換が必要である。
 上鍵盤のキー接点は9列ある。先端にパラジューム合金接点の付い銅板の切片が、下から16', 5 1/3', 8', 4', 2 2/3', 2', 1 3/5', 1 1/3', 1' と9列並んでおり、鍵盤を押し下げた時に適度なキータッチの重さがあり、微妙な接点接触タイミングのズレが生じ、タッチレスポンスの機能などないのにこれがB-3独特なキークリックなどに現われて、結果的によい影響を及ぼしている。

 B-3 のプリセットスイッチは、上下キーボードの左端1オクターブが機械的にロックされる白黒が反転した鍵盤になっており、これがスイッチになっている。右端のA#, B キーが左右2セットのドローバーに対応していて、パーカッションは上鍵盤のBプリセットにのみに掛けられる。中間のプリセットキーのレジストレーション(ドローバーの組み合わせのこと)は、裏側のプリセットパネルの配線を変えることで容易に変更が可能である。左端のCがキャンセルボタンになっているので、誤って2つのプリセットキーを押してしまった時などにはこれを押してキャンセル(リリース)ができる。演奏中にこれらのプリセットスイッチを切り替えることで、瞬時にドローバーセッティングの音色を変えることができる。 この機能を利用して、オルガン奏者の中にはこのキャンセルキーを押し続けながら、色々なプリセットキーをリズミカルに押し変えて音色を変えるという方法をを使う芸達者もいる。

ビブラートとコーラス

 ハモンドB-3 には、ビブラート・ラインボックス、スキャナー、ビブラートスイッチそれにビブラートアンプによって構成されるビブラート・システムがある。3段階の深さのビブラートがあり、その各々にコーラス効果が付け加えられている。
 このビブラートのオン/オフはキーボード左上に付いた2つのタブレットスイッチにより、上下別々に掛けることができ、右端のビブラート・グレートと書いてあるのが下鍵盤用、ビブラート・スウェルとあるのが上鍵盤用である。そしてその右側に位置する黒い丸いつまみがビブラート/コーラスのセレクターであり、ビブラートのみのV-1, V-2, V-3、ビブラートにコーラスが加わったC-1, C-2, C-3と切り替えることができる。
 ビブラート効果は周期的にピッチを上下させることによって作られており、基本的に音量変化のトレモロとは異なる。ハモンド・ビブラートは、連続的に位相を変えることで周波数を変化させており、それはフェーズシフト・ネットワーク或いはエレクトリカル・タイムディレイ・ラインと呼ばれるシステムで、沢山のローパス・フィルターとモーターで駆動されるスキャナーによって構成されている。

パーカッション

 B-3 に於いてパーカッションというのはドラムサウンドのことではなく、アタックを掛けるのに用いられる。ハモンド・タッチレスポンス・パーカッションはドローバーの持続音に対して、減衰音である。B-3 の場合、セカンドハーモニック(第2倍音)とサードハーモニック(第3倍音)の減衰音が得られ、音色的には前者が 4' のドローバー音、後者が 2 2/3' の音である。それはパーカッションの音は4'と2 2/3' のドローバーの信号を借り受けて作られているからである。従って4'のドローバーが8まで引き出されているときにセカンドハーモニックを、2 2/3' のドローバーがフルに引き出されているときにサードハーモニックのパーカッション・アタックを掛けてもその効果は薄い。このパーカッションは上鍵盤の Bプリセットにのみ掛けられ、その他のプリセットや下鍵盤では掛けられない。

 このタッチレスポンス・パーカッションは基本的にノン・レガート奏法のときに効果的であり、レガートで弾いた場合、パーカッションが減衰を終了してしまった後は、もうその音は聞こえてこない。それでノンレガートとレガートを弾き分けることによって、タッチレスポンス・パーカッションをより効果的に使うことが出来るわけである。
 コントロールはスタート/ラン・スイッチの下に4つ並んだ白いタブレットスイッチでコントロールする。左から、パーカッション・オン/オフ、パーカッション・ボリューム(ノーマル/ソフト)、パーカッション・ディケイ(スロー/ファスト)、パーカッション・ハーモニック・セレクター(セカンド/サード)となっている。

 尚、パーカッション・ボリュームをノーマルにセットすると、上鍵盤ドローバーの音量はわずかに小さくなるようになっている。またパーカッションは1' 用の接点を利用しているので、パーカッションをオンにすると1'のドローバーの音は出なくなる。
 パーカッションの減衰時間はプリアンプの正面にポットがついており、これで調整が可能である。プリアンプの右端には12AU7という真空管があり、この真空管が不良の場合パーカッションは減衰せずに持続音になってしまう。またこれを交換した際には、前述のの調整をする必要がある。

エクスプレッション・ペダルと真空管プリアンプ

 オルガン背面にある2本の真鍮製のサムスクリューで簡単に取り外せる裏蓋を取り除くと、すぐ正面に8本の真空管が並んだプリアンプが目に入る。その中央には四角いケースがあり、この中に可変コンデンサーが収まっている。そしてこれのシャフトが金属のロッドでペダルと連結されていて、ペダルの動きに応じてコンデンサーの容量が変化してボリュームをコントロールする仕組になっている。B-3 など当時のオルガンはベロシティやアフタータッチなどのタッチセンシティブな鍵盤をもっていなかったので、音の強弱、抑揚をつけるのにこのペダルを用いる必要があった。それで、ボリュームペダルとは言わずエクスプレッション・ペダルと呼ばれている。尚、ハモンドオルガンにおいては、このペダルを最も引いた状態でも、音が完全に消えず少し残るようにセッティングされている。
 一般のボリュームペダルが 可変抵抗を使用しているために、古くなると雑音やガリが出てくるのに対し、ハモンドのエクスプレッション・システムではそのようなことはないし、動きもとてもスムーズである。
 プリアンプのシャーシーには前述のパーカッション・ディケイ・コントロールのほかに、トーンコントロールも備わっているので、ユーザーの好みの音質に調整できる。
 B-3 のプリアンプには 6AU6 が2本、12BH7, 12AX7 が1本ずつ、パーカッションアンプ部に6C4が2本と12AU7 が1本が使われ、他に整流管として6X4 が1本の計8本の真空管が使われている。これらの真空管はまだまだU.S.A.管で手に入るので、交換の際には品質に留意したい。

 真空管アンプの魅力は何といってもそのウォームなサウンドに尽きると言える。またパワーを掛けたときでもきれいに歪み始め、その歪み具合もスムーズでトランジスターアンプではとてもかなわない。


 ハモンドオルガンB-3ファミリーには B-3 と全く同一のコンポーネントをもったC-3、それにスピーカー、リバーブ等を装備したA-100シリーズ、32鍵の足鍵盤をもったC-3の兄貴分でコンサートモデルと呼ばれたRT-3, それにサウンドシステムを取り付けたD-152があるが、音質に関しては基本的に全く同一である。またスピネットモデル(44鍵2段の小型家庭用オルガンをこう呼ぶ)では M-3, M-100シリーズというモデルがB-3ファミリーに含まれ、L型やT型と区別される。
 B-3は同一モデル名の下で約20年の永きに渡って製造されたが、その年代によって外見上や使用パーツなどで多少の差異が見られ、音色にも微妙な変化が現われている。
 初期、前期のモデルは比較的ソフトでマイルドな音色で、後期のモデルはシャープでクリアーな感じである。また鍵盤のタッチは後期モデルの方が重みを感じさせる。
 その年代であるが、見分け方はいくつかあって、シリアルナンバーのほか、そのナンバーを記入したネームプレートの素材がアルミで出来ているものが初期型に入り、プラスティック製のものは60年代後半の中期型から後期型、70年代の最終型のそれは紙に変更されている。外見上ではドローバーに数字が入っているものが一番新しい部類で、またオレンジ色のパイロットランプが付いているものは後期型以降の生産である。また外装の仕上げにもポピュラーなウォルナット仕上げのほかに、ライトチェリー、プロビンシャル、レッドマホガニーなどがあり、シカゴの工場のほかにベルギーのハモンドオルガン・ヨーロッパとイギリスのハモンドオルガン U.K.でも製造された。
 キャビネットの仕上げや内部の作りの良さは、手抜きの見られない初期型の方が上である。
 
 製造が中止されて以来、20年以上が経過しているが、そのサービスパーツの多くはまだ手に入る。イリノイ州のオルガンサービスカンパニーというハモンドのサービスを手がけている会社で、元ハモンド社でサービス部門に在籍していた社員が残ったパーツを買い上げ、または再生産して供給を続けているからである。
 トーンホイールオルガンの寿命も来世紀に向けて、まだまだ延びることであろう。 God Save the B-3. □


レスリースピーカー

 レスリースピーカーシステムは1940年にロサンゼルスのドン・レスリーによって開発され、その後ハモンドオルガンには無くてはならない存在になっている。
 レスリースピーカーはいわゆる回転スピーカーではない。(一部には回転スピーカーや電子レスリーといえるものもあるが。)スピーカーの前面に配置されたプラスティック製のホーンローターと呼ばれるトレブルドライバー専用のローターと、黒い布のプロテクションカバーに覆われた合板でできたベーススピーカー用のドラムローターが、大小2つのモーターがセットになった2スピードモーターによってベルト駆動で回転を与えられ、音を360°拡散してトレモロ効果を作り出すシステムである。
 ファストモーター(大モーター)のシャフトには50Hzと60Hzでは大きさが異なるプーリー(滑車)が取り付けられており、これとローターのプーリーに布製のベルトが掛けられローターをファスト回転させている。
 またファストモーターのシャフトの反対側には"O"リングと呼ばれる直径約8cm弱のゴムタイヤが取り付けられており、ファストモーターの電源がオフでスローモーター(小モーター)に電源が入っているときに、スローモーターのシャフトが"O"リングと接触を保ってファストモーターのシャフトに遅い回転を与える。これがレスリー・スローの状態である。
 21H, 22H, 31H, 45, 47 等の古い形式のレスリーにはこのスローモーターがなく、ファスト(トレモロ)とオフのみであった。
 ハモンドオルガン専用に開発されたレスリー122は基本的には147と同一であるが、信号の入力方法が122はバランス入力となっているのに対して、147の方はアンバランス入力になっており、またスロー/ファストの切り替えのためのリレー回路がDCとACの違いがある。そのために122には12AU7という真空管が1本余計に付いているが、定電圧管OC3、40Wプッシュ/プルのペアの出力管6550、プリ管12AU7等は同一で、採用されているスピーカー等のパーツも全く同一のパーツナンバーが与えられている。
 従って、基本的には両者の間には音の差異はなく、単なる製造年代の相違による部品供給メーカーの違い、あるいは個体差によって多少のばらつきがあるかも知れないが。しかしB-3等のバランス出力をもつオルガンでは122の方が遥かに良い音が出せる。
 これらのレスリースピーカーをハモンドオルガン以外の楽器、例えばシンセ、エレキギターなどのアンプとして使用する場合にはコンボ・プリアンプと呼ばれフットスイッチでスロー/ファストのコントロールを行う機能をもったフロア用のプリアンプがある。レスリーとコンボプリアンプはレスリー・コンダクターケーブルで接続し、コンボプリアンプの1/4"インプットジャックにシールドを接続して使う。現在 アメリカのTREK II PRODUCTS というハモンド、レスリー専用のアクセサリーを製造している会社から ユニバーサル・コンボプリアンプなるものが販売されている。これはたいへん優れもので純正にはなかった122との接続のほかに147, 760, 722などコネクターのピン数の異なった異種のレスリーが接続でき、また同時にコントロールすることが可能である。


 尚、レスリーは大きすぎて持ち運ぶのは大変だと思っている人に朗報がある。アメリカのMotion Soundという会社からPro-3Tという名称の片手で持ち運びのできるハイブリッド・ロータリースピーカーが発売されている。新たに12AX7Aを用いたチューブアンプを採用した。
 これは30Wアンプが内臓され、高音用にはエミネンスのトレブルドライバーとモーター駆動によるホーンローターを採用し、低音用には電子的にロワードラムローターの働きを再現したライン出力端子を設け、2つのフットスイッチでコントロールをするという極めて優れた製品である。


この記事に関連したことについてのご意見、ご質問がありましたら、筆者までご連絡下さい。

Secrets of HAMMOND ORGAN B-3

c. Kazuo Iwase @ URBAN MUSIC, Tokyo, Japan
この文章はキーボード・マガジン 1995/12 に掲載された記事に加筆してあります。

Technical Information に戻る